ポケベルの思い出

こんな事
が、有ったせいで昔の出来事を思い出した・・・
もうかれこれ12~3年前の話。
その当時私は会社からポケベルを持たされていた。
今の中高生はポケベルなんて物を知らないかもしれないが、その当時は携帯電話(その昔は自動車電話とか言っていた)はまだまだ一般に普及しておらず、外出中・移動中の人間への通信手段はポケベルぐらいしかなかった時代だ。
歌の歌詞までもポケベルが鳴るの鳴らないのと言っていたが、今ではあんな使いにくい通信手段を利用していたなんて嘘のような時代だった。
ある日会社に居る時に、同じようにポケベルを持たされている後輩のベルが鳴った。
会社で持たされているポケベルなので会社のデスクに居る時にポケベルで呼ばれる事はまず無い。
しかもポケベルに表示されている番号は、とてもどこかの電話番号や社内の内線番号とは思えない番号の羅列になっていた。
「何だよ間違いか?」とその後輩はポケベルをしまったが、その日は結局その後輩に、謎の間違いベルが3度ほど入った。
いずれも表示される番号は違う番号ながら意味不明の番号の羅列だった。
翌日もまたベルが鳴った、その時ふと近くに居た人が「その意味不明の番号って、もしかしたら2桁カナコードじゃない?」と言った・・・
そうだ、会社のポケベルは古い安物の機械なのでポケベルに送る事が出来るメッセージは数字だけだが、その当時の最新式のポケベルはカナをメッセージとして受信する事が出来る。
ポケベルにカナは表示できてもポケベルをコールする電話機はカナを送る事が出来ないので、そのために”ア”なら11”ク”なら23と言った番号で送る2桁カナコードというのが有った。
その当時の女子高生などは凄い速度で変換表も見ずに2桁カナコードでポケベル発信していた。
(ちなみに最近の携帯メールも2桁カナコード入力が出来るらしく、携帯メール魔の人はいまだ2桁カナコード愛用者も居るらしい)
で、暗号の解読に糸口を見つけた我々は、早速これまで受信した後輩のポケベルを奪い取り受信履歴を初めから2桁カナコードの変換表を見ながらカナに変換する事に成功した。
履歴1「デンワシテユミコ」
履歴2「デンワマッテルユミコ」
履歴3「ムシシナイデ」
なぞの番号が解明できただけで、周りは大盛り上がりだ!
そして先ほどの着信が「オハヨウユミコ」だった!
もうこうなると電車男の毒男部屋の住人たちの心境である。
「A君早くユミコって子に電話してあげなよ」
「あ~、それより『オハヨ』って返信してやりたい~」
しかし、完全な間違いベルである。
ユミコという名の人の電話番号もポケベルの番号も分からない。
それからも楽しい間違いベルは続いた。
「キョウナニシテル」
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
「仕事してますって返信しろ~」
「ちきしょ~ユミコ頼むから『もしかして私のベル番号忘れた?』とか言ってベル番号送れ~」
と、後輩のポケベルが鳴る毎にみんなで仕事を中断してユミコからの一方的なメッセージに盛り上がっていた。
しかし、一方的な間違いベルをいくら送っても返事が届くわけも無く。
(というか番号さえ分かれば是非レスポンスしたかったがそれもかなわず)
ユミコさんは一人で落ち込んでゆく
「ユミニハヘンジナシデリョウコニハヘンジスルノ」
「キョウモワタシノコトサケテル」
と、だんだんとブルーなメッセージが続いた後
「イマカラシニマスユミコ」
と、とんだ内容が飛び込んできた
「おいおい早まるな~」とか
「だから誰か返信しろよ~」
と大騒ぎである。
そして翌日
「ヤッパリレンラククレナイノネ」
と来た時には、みんなで「お~、まだ健在だよ~」と拍手喝さい。
その後、間違いベルは同じような浮き沈みのメッセージ内容のまま間隔は長くなりつつ、いつしか飲み会の席でA君に「そういえばユミコは元気なの」というのがまれに話題に上るぐらいになり、そして間違いベルは掛かってこなくなった。
きっとユミコさんに気が無い彼が適当な番号を言ったらA君のポケベルに当たったのだろう。
ユミコさんはその事に気が付いて間違いベルをしなくなっただけなのか、それとも・・
思い出すとユミコさんのその後が気に掛かります。










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