よしを’S質問箱(Deep編)
分類 @@#アクア一般#@@
Q1039.phの不思議
【あん さんからの質問】
こんにちは。いつも拝見させて頂いてます。
過去のQ&Aにも似たような質問がありましたが、ちょっと違うので投稿させていただきます。
いろいろと水質について勉強してきましたが、どうしても私の中で?な部分があります。
それは「水は放っておくと酸性に傾く」「水が出来てくると酸性に傾く」と良く聞きますが、ウチでは逆になってしまいます。

=水槽A 60cm 立ち上げ4ヶ月目=
底砂はピュアサンド(製品の肩書きには弱酸性に保つと書いてあります)
水草は沢山、CO2あり(1滴/2秒)、夜間エアレ、流木大2つ、外部濾過、テトラ類30匹、換水週1で1/3、20W4灯、CO2&ライト共8時間

ちょうど水が出来てきて、コケもつななくなってきた水槽です。
換水は水道水のPHが8.0なので、PH降下剤を使って6.5〜7.0まで落としたのを使用しています。
しかしPHを計ってみるとだいたいいつも7.5くらいあります。
試しに降下剤を入れ、数日かけて6.5に調節してみても、数日たつと7.5くらいに戻ってしまいます。
しかし過去ログでよしをさんが
>水草水槽は換水時にはアルカリ性に傾いている
と書いてあったので、少し納得しました。

=水槽B 30cmののっぽ水槽(25Lくらい) 立ち上げ3ヶ月目=
底砂はサンディーゴールド、水草はモス少々・ミクロソリウム少々、外部濾過、CO2なし、エアレなし、流木中1つ、グッピー2匹&エビ10匹、換水は足し水のみ、20W2灯、ライト6時間

この水槽はダンナのなので、ダンナの意志により換水はしてません。
A水槽の換水時に余った水を足しているだけです。
しかし、PHは7.8です。
水草はいっぱいないので、アルカリ性に傾く原因が見あたりません。
又、放っておいているのにもかかわらず、酸性になりません。

=旧水槽C 20Lくらい 立ち上げ3ヶ月の時=
底砂は川砂、水草はカモンバ少々、CO2なし、流木中1つ、外掛け式濾過、メダカ&タナゴ合わせて10匹、換水は足し水のみ、10W1灯、ライト不定期、エアレ常にあり

こちらはもうありませんが、去年夏にあった水槽です。
環境とメンテナンスはBに似ています。
足し水は水道水をカルキ抜きしただけで、ph調節はしてませんでした。
当時水道水のPHはやはり8.0ありました。
しかし、水槽内のPHは5.5〜6.0と低くなってました。

このようにB&Cの環境が似ているにもかかわらず、PHが違う理由がわかりません。
Bは水草を少ししかいれてない、換水もしてないのにPHが上がる原因が分かりません。
この矛盾はどういったことで起こるのでしょうか?

A1039.pHはいい加減なもの
まずpHについては何を表しているのかは分からないということをよく理解しましょう。
例えば私の家の水槽のpH7.0の水槽水と、あん さんの家の水槽のpH7.0の水槽水が同じ性質であり、私の家の水槽で良く育つ草はあん さんの家の水槽でも良く育つと考えられるでしょうか?

また、同じpH7.0の水だからと言って町中のどぶ川で汲んできた水を、水槽に入れても問題ないでしょうか?
外から見て透明度や臭いに全く差が無く、同じpH7.0の水なら生体や草に同じ状態をもたらすと考えることが可能でしょうか?

アクアリウムではpHがいくつであることが重要なのではなく、どのような水質であるかが重要です。
しかし、水質の検査で「アクアリウム向け良い水質度」という数値が出てくるわけもなく、だから仕方なく水質を推測するための一つの間接的数値としてpHを使用するのです。

まずそういったことを理解せず薬品を使ってpHをコントロールするというのはpHが目的の数値になるだけで、水質が目的の状態に成るわけではないと言うことを良く理解して下さい。

次ぎに蛇口から出てきたばかりの水道水は本当のpHではないということを理解しましょう。
水道の蛇口から出てきた水は、消毒用の塩素はもちろん、色々な成分やガスが溶け込んでいます。
塩素は水槽に入れる前に除去されてしまいますし、その他の成分も水槽に入れることで水草に吸収されたり化学変化を起こしたり蒸発したり、拡散されたりします。

基本的には都会の上水道は送水圧の関係で二酸化炭素がよく溶け込んでおり、その為蛇口から出たばかりの水がpH7であっても水槽に入れて二酸化炭素が吸収されたり逃げたりすればpHは上がる傾向になります。

またpH降下剤の多くは水草が吸収する成分であることが多いので、水草水槽に使用しても、効果がすぐになくなってしまっても不思議ではありません。
水草への肥料の代わりには成るかもしれませんが、それなら水草用の肥料を与えた方がよほどましと考えると、水草水槽でpH降下剤を使用する意義は無いと私は思います。
(もちろん水草水槽でもレベルの高い管理を行いたい場合に、前述の特性などを全て理解した上で、それでもpH降下剤を使用する場合もあります。)

以上の事から水槽AのpH変動については納得できるかと思います。

さらに「水が出来てくると酸性に傾く」ですが、まず「水が出来る」というのは誤解を招く表現ですので、なるべく使用しないようにしましょう。(理由はこちら
「水が出来る」とはすなわち「濾過がきちんと機能する」ですね。

ご存じの通り濾過が機能するとアンモニアは亜硝酸を経由して硝酸塩へと処理されます。
アンモニアという猛毒の物質が硝酸塩という毒性のほとんど無いものに処理されることで、水槽水の浄化が行われるわけですが、硝酸塩が蓄積するとpHは酸性に変化します。

従って、濾過が機能している環境でアンモニアが給餌や魚の排泄物で継続的に発生すると、硝酸塩が徐々に蓄積されることでpHはだんだんと下がってくることになります。
通常の水槽環境ではいくら濾過がきちんと機能していても好気性濾過の最終成果物である硝酸塩の蓄積により水の汚れは進行するのです。
従って通常の水槽では硝酸塩を除去するために換水という行為を行い水の汚れが進行することをくい止める必要があるのです。
よくその辺のことを理解していない人が、濾過を強化すれば換水頻度を少なくすることが出来ると思うようですが、以上のことを理解していればそんな勘違いは無くなるでしょう。

硝酸塩の蓄積は生体を多く飼育していたり与える餌の量が多い水槽などで、アンモニアの発生と濾過が活発に行われている環境ほど顕著に現れます。
ディスカス水槽などでは硝酸塩の蓄積によるpH低下が、水質管理のかなり重要な問題となるのが一般的です。
逆に生体が少なく、餌もあまり多く与えない水草水槽の場合、そもそも硝酸塩の発生量が少ないですし、少量ではありますが水草が硝酸塩を吸収しますので、硝酸塩の蓄積は他のスタイルの水槽に比べてかなり少なくなります。

水槽Bは生体が少なく比較的水草水槽の硝酸塩蓄積特性に近かったのではないかと思われます。

水槽Cは逆に水量に比べて生体が多い為、硝酸塩の蓄積パターンによるpHの低下が起こっていたのではないかと思います。

またpHというのは水槽内の色々な物で大きな影響を受けます。
流木1本入れただけでpHが上がり気味になったり下がり気味になったりすることも良くあることです。
また底床によっても大きく特性が変わります。
個人的には好きではないですが、濾材によってもpHに作用するような特性のものも有ります。

pHを始めとする水質全般はありとあらゆる事が複雑に絡み合って、人間の想像や推測が及ばない所でその結果が現れると思っていた方が良いでしょう。

水槽の環境では1+1=2には成らないのです。
人間が水槽の環境に対して1+1=2に成るだろうと思って行動したときは、余計に答えが2にならない場合の方が多いです。
1+1=マイナス5という結果になっても、そういうものだと思えるように成ったとき、管理者として水槽の状況がなんとなくつかめるレベルに成れたと言って良いのではないかと思います。

水質チェックをまったくしないことは良くないですが、水質検査の数値にとらわれすぎるのも良くないことと思います。
アクアテロリストのコラムにその辺のことを書いた物がありますので、そちらも参考にしてみて下さい。


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