”水作り”という言葉

私は少し前に、とある電子会議室で”入門アクアリストはどういった所でつまづくか?”というような話題を話し合いました。
その時ある方の意見を聞いてとても驚きました。

その方の話とは「自分がアクアリウムに入門したての頃『水作り』という言葉を勘違いしていた」というものでした。
私がどうして驚いたかというと、それは非常にもっともな話であり我々が日頃何気なく使っている『水作り』や『水が出来ていない』といった言葉にはそういった落とし穴が有ったのか!、と初めて認識したからです。

「水作り」という言葉は既にアクアリウムの知識を習得している人なら、一つだけではなく色々な意味でこの言葉を使いますが、それが入門したてのビギナーアクアリストに対して使う場合には、濾過が機能し安定した水槽に成るまでのことをさして「水作り」、またそれがまだ完了していない事をさして「水が出来ていない」という表現をする事が多いと思います。

「あなたの水槽はまだ水が出来ていませんね」とか「水槽を設置したばかりの頃は水作りに全神経を使って下さい」という言葉を聞いた入門者はどんな風にその言葉を受け止めるのでしょうか?
その後に濾過についての話をきちんと聞いたならその本当の意味を知ることが出来ますが、入門したてのアクアリストが上手く行かない事の相談を経験者やショップの人にしたときに、簡単に「それはまだ水が出来ていないからだよ!」とだけ言ったなら・・

それはまさに”水は作り上げる物=組み上げる=BUILD UPするものであり、自分は未熟なためにそれが上手く出来ていない”と受け取る可能性が有るのではないでしょうか?

そういった印象を持ったときに、ふとアクアショップの棚を見上げるとそこにはありとあらゆる調整剤だなんだと色とりどりの物が並んでいます。
「そうか、世の中のアクアリウムを上手く楽しんでいる人っていうのは水道から出てきた水に対して、こういった薬品類を駆使して水を作り上げそれを水槽に入れているんだ、自分はまだ未熟でこういった調整剤や薬品を上手く使いこなせていないから魚が死ぬんだ」と思う人も少なくないと思います。

そしてそういった人達は「高ければ高いほど効果が有りそうだから自分のような水がまだ上手く作れない人間は高価な調整剤や薬品を使えば上手く行くだろう」とか「この調整剤とあの薬品とそのバクテリアを一緒に入れれば、さぞ効果が有り上手く水を作れるのではないか?」と感じるのかもしれません。

確かに、水換えをするための水は温度を合わせて塩素を中和するという作業が必要で、それを「換水のための”水作り”」と呼んでも良いでしょう。
また、マニアの人が自分の意図したようなpHや硬度に水を調整することを「水作り」と呼んでも良いでしょう。
でも、入門したてのビギナーアクアリストが一般的な魚を飼育する場合には、水は温度あわせをして塩素中和してあればそれ以上の事は不要で、水を”作り上げる”必要はまったく無いのです。

我々経験者もそういった言葉で誤解を招かぬよう、「水が出来ていない」という言葉は使わずに「濾過が機能していない」というような言葉を使うように心がけた方が良いようですね。


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