そろそろ中身のない日記だけの更新ではなく、技術集の中身のある情報も追加せねばと思い久しぶりに技術集らしい技術話をしようと思います。
とりあえず、このページとあと1ページを使って底床にまつわる話をしようと思います。
最終的には「底床に何を使うか」という話は「どの魚を飼育するか」と似たような所が有りまして、結構好みの問題になってきます。
それぞれの素材にはそれぞれの良い点と悪い点が有って当然です、これからお話しする事は勿論私の好みがかなり加味されての結果ですから、従って私が好きではない物については私が思っている悪い点を強調して表現するでしょう。
人によってはその悪い点が大した問題ではなく良質な素材である場合だって十分に有ります。
「俺はこっちの方が好きだなぁ・・」なんて思う人は、それはそれでこのページに記述されていることは「よしをの趣味なんだ・・」とさらりと流してもらえば結構です。
どの素材がどんな物なのか全く分からない人には少しぐらいは役に立つと思います。
それでは、前置きが長くなりましたがここから本題です。
底床(読み:ていしょう)とは水草水槽にはかかせない物です。
昨今色々な種類の底床が有るので何を選んだらいいのかかなり迷ってしまうのが現実です。
また一旦導入してしまうと後で気が変わっても底床を変更するというのは、そうそう簡単に出来るものでは無いので、初めによく吟味して底床を選んだ方が良いです。
【底床全般についての話色々】
まずは底床の種類やメーカーの話に行く前に、どんな種類の底床であっても関係する底床全般についての話をします。
- ・粒の大きさについて
これは結構重要です。
多くの種類の底床はサイズ違いの粒が販売されている事が多いです。
粒が細かすぎると水圧によって底床が堅く締まるという弊害が起きますし、通水性も粒が細かいほど悪くなります。
もっとも細かい物で砂浜の砂粒程度、大きな物で小豆大です。
個人的には砂状のものも小豆大の物も水草水槽には向かないと思います。
もっとも一般的な米粒程度の粒が一番良いでしょう。園芸の場合の鉢の中の用土よろしく、水槽の底床も下層に粒の大きな物、上層に粒の小さな物と層を作って使い分けるというやり方もよく見かけますが、個人的には好きではないです。
水草の植え替えや底床掃除をやっている間にだんだん混ざってきますし比重が違えば軽い物が上になろうとしますので、気が付いたらごちゃ混ぜになっている事が多いからです。何となく園芸のように層を作るのはとても良いことのように思えますが、そういった弊害も多いし「そこまでしなくても良いんじゃないの?」といった感じです。
- ・粒の状態について
自然採取の素材や何かを粉砕して作られた物は粒の一つ一つの角がとがっている物が有ります、そういった底床では”コリドラスのひげが無くなる”や”植え替えの時に水草の根が傷付く”等の弊害があります。
そういった底床もあまり良くないです。
- ・比重について
素材によって軽い物が有ります。
小さな草を細かく植えていくような場合は、軽い素材の物はなかなか上手く植え込めない場合が有るようです。
- ・ゼオライトの使用について
これも園芸の場合よろしく、(根腐れ防止やイオン交換を目的としてか)底床にゼオライトを使う(混ぜたり下層にしいたり)場合があるようですが、これもあまりお勧めしません。
長期間にわたってその効果が有るとは思えないのと、塩によるイオンの逆交換が発生するため魚病薬の多くに含まれる塩分が思わぬ問題を引き起こしかねないからです。
【底床の分類】
アクアリウムにおける底床の種類を分類し、特性などを説明します。
- ・自然採取系
底床の定番「大磯砂」に代表される、川・海・山で採取された物をそのまま使う物。
同じ大磯砂でも採取場所や流通経路によって善し悪しがバラバラなので良質な物を選ぶ必要がある。
- ・半加工系
土や石を粉砕したり焼いたりして作成した物。
「焼き赤玉」や「アクアプラントサンド」「アクアソイル」等がこれにあたる
自然採取系よりも加工が加わっている分調整されているので色々なメリットがある。
ただし、その加工の方法が栄養化(肥料分を含ませたり液体肥料に浸すなどの)加工の製品は個人的にはお勧めしない。(理由は技術集奥義の「初めから苔を寄せ付けない」参照)
- ・完全合成系
ガラスやアクリル等を材料にして合成された物。
白・青・緑などの色が綺麗で粒も綺麗な形をしている物はだいたいこれかな?
均一で当たり外れが無いことと水質を変化させない事はいい点であるが、バクテリアの住み着きという点では少し劣るような気がする。
【銘柄別底床の話】
最後に各銘柄について個人的な意見を含めご紹介します。
- ・大磯砂
昔は神奈川県の”大磯”という土地(芸能人水泳大会で有名な大磯ロングビーチの有るところ)で生産されていたので”大磯砂”という名前で呼ばれる。
建材用等に乱採取されたため最近は国産の物はほとんど無く、多くはフィリピンなどからの輸入物。
ショップによっては明確に”フィリピン砂”と呼んで国内産ではない事を知らせている所もあるが”大磯砂”といえば輸入された物と思って良いだろう。
アクアリウム用の底床の定番と言っていい、昔はこれしかなかった。
プロホースなどを使って定期的に掃除する事も出来、長期維持水槽にはもってこいである。
水槽をリセットする際にはきれいに洗って何度でも再利用できるので一生物とも言われる。
長期間使用することで、後述のカルシウム分も自然に抜けて熟成された最高の底床となる。
使い込んだ年代物の大磯砂はアクアリストにとっては金の砂に見えることでしょう。
悪い点は多かれ少なかれ貝殻を含んでいること。
水草水槽のような弱酸性の水にさらすことで、その貝殻が溶かされカルシウム分として水槽水にとけ込むと、水の硬度を上昇させるという事に結びつく。
粗悪な物になると大量の貝殻とゴミと塩分まで含んでいる物があるので、なるべく良質な物を入手するのがキーポイント。
ホームセンターの建材コーナーなどで大袋800円位で売っているがほとんどアクアリウムには向かない物ばかりなので、ちゃんとしたアクアショップで入手した方が良い。
硝酸や塩酸による酸処理をする事によって貝殻を無くすことが出来るが、かなりの手間が掛かるのと危険性があるので、そう簡単には出来ない。
処理後の洗浄もかなり入念にしなければセット後強酸性に水質が傾くので注意が必要。
大型水槽用に大量の処理をするのは不可能に近いと思う。
酸処理をして使う場合を除いて、貝殻が少なくて良質の物を入手するのが一番大事なポイントとなる。
購入後は水で洗いながらゴミを取り除く。
濁りが無くなるまでよく洗う事。
- ・川砂
底床用に大量販売しているのはほとんど見かけない。
特性は大磯砂と同じだが川なので貝殻がほとんど入っていない。
- ・富士砂
溶岩を砕いた細かな砂利で富士山のふもとの砂はみんなこれである。
実際販売されている物が富士山のふもとで採取された物かどうかは不明。
園芸の世界では比較的ポピュラーな用土である。
軽石のような多孔質なので水通りや土壌バクテリアの繁殖には良いらしい。
難点は比重が軽く植え込みが難しいのと、粒の角がとがっているので根を傷つけるという点である。
アクアリウム用にはあまり向いていないと思う。
- ・焼き赤玉
園芸用の土で「赤玉土」と呼ばれる物をさらに焼いて固めた物。
園芸用の特別な土で元々は蘭を育てるための用土。
生産量・流通量ともに少なく、入手するのはなかなか難しい。
製品によっては焼きが浅く爪で押しただけで粒が潰れてしまう粗悪品も有るので注意。
良質な物は爪で押したぐらいでは崩れない。
よって長期維持や再利用にもOK。
見た目が赤玉土と同様赤茶けた色をしているので、見た感じ落ち着きが無いという意見もあるし華やいだ感じになって良いという意見もあり好みが分かれる。
水を弱酸性に保つという特性があり形状もバクテリアの住み付きには良さそうである。
難点は初めに強烈に酸性に水質を傾けること。
購入時はふるいに掛けて砂状の物を取り除く事。
これも製品によって3割ほどの微塵が抜ける場合もある、たいがいは1割ほど減る。
洗浄はいくらやっても濁りは取れないので軽くすすぐ程度で良い。
使用前に数ヶ月間水に浸して定期的に水換えする等の準備が必要。
- ・パワーサンド
ADAから販売されている底床に混ぜて使う肥料分をしみこませた底床の商品名。
私はこの手の物はお勧めしない。
特に初心者は使わない方が良いだろう。
水槽セット初期にそんなに水槽を富栄養状態にしない方が良いというのがその理由。
濾過が出来上がって水草が育ちだしてから栄養分を補給すれば良いのだから。
- ・アクアプラントサンド、アクアソイル
アクアプラントサンドは販売メーカーを失念。
アクアソイルはADAから販売されている。
それぞれ製品名。
どちらの製品も土のような素材を粒状に固めた物。
水槽水を弱酸性にし、硬度を低くするという特別な特性がある。
スーパー底床と言っていいほど難種の草も容易に育成出来る素晴らしい底床である。
これらの底床のおかげでトニナ・SPがいつの間にか容易種になってしまったほどである。
多くの水草自生場所は砂利ではなく土の底床であるので、そう考えると砂利である大磯砂で育成するのがそもそも間違っているのかもしれない。
しかし、そのおかげで底床掃除は事実上不可能。
植え替えを頻繁に行うと底床がどんどん土化してくる。
植え替えしなくても1年を過ぎると粒が潰れて土化してくる。
掃除が出来ない上に底床が土化してくるので1年からもって2年でその水槽は終わる。
再セットする際には今まで使っていた底床を捨てて取り替える事になる。
”旨い・早い・使い捨て”という全く現代の風潮にマッチしたハイテク底床だと思う。
これを使って今まで苦労した難種を制覇して優越感に浸りたい気もするが、どうしても好きになれない(^^;)