初めから苔を寄せ付けない

水草水槽を初めてまず初めに上手くいかない原因になるのが苔でしょう。
買ってきた水草はろくに育たずガラス面も水草も全部苔まみれという状況に陥るのは、誰しも経験する道です。

私はいつも水草水槽のことを次のようにとらえて話します。
水草水槽が綺麗でいられるかどうかは水草と苔の勢力争いである。

水草が元気で有れば苔はかなりダメージを受けて(と言うよりも吸収できる栄養素が不足して)苔は元気がなくなります。
逆に苔が元気な状態では水草はすぐに苔にとりつかれて葉に苔が生え窒息して死んでしましいます。

以上のことをよ〜く頭に置いて下さい。
初心者の方でよく犯す失敗というのが苔のかなり有利な状況になっている水槽に対して、新しい水草を導入するのにその量が全然少ないという失敗が多いように思います。
確かに今まで苔が勢力良く繁殖している状況を目にしていると、そのような状態の水槽に1束500円の水草でも10束入れようと踏ん切りが付かない気持ちは良く理解できます。
しかし、パワー全開の苔部隊100人の戦士の真ん中に水草一個小隊5人を派遣してもアッという間に玉砕されて終わってしまうのです。

これも奥義その1の「初心者ほど装備を充実させて〜」と同じく、水草に歩が悪いときほど大量に水草を導入するというちょっと初心者の心理に反する事をするべきなのです。

それから大切なのは水草大部隊200人を派遣するなら、その前に管理者の手によって前もって苔部隊にダメージを与えておくことが大切です。
野球の試合に例えるなら8回裏苔の攻撃で水草チームは30対0で負けています、さて貴方ならどうしますか?
これも初心者がよくやる過ちですが、どうにかして9回の攻撃で逆転しようと考えがちです。
私なら「こんな試合辞〜めた!」と言います。
そう、あまりにも苔にやられている場合は新しい水草を大量に使って水草の勢力を回復させる前に、現在の苔まみれの水草から苔の付いていない部分を残してカットし・・・と後述の「新たな出発の仕方」のようにリセットしてしまいます。

私は水草水槽を楽しむという事は切り花を花瓶に生けてその美しさを観賞するのとは違い、水槽で育成してこそその素晴らしさが分かると日頃から考えていますので、安易な再セットや綺麗で有れば草は買ってきて植えて枯れてを繰り返しても良いという考え方は断固として反対しますが、まだ一度もまともに水草を育てた事がなくてその改善方法が全く見あたらないという人に限って、苔を落として再セットし元気な水草一杯で新たな出発をする事をお勧めします。

そうしてこの時点から苔を一度も元気にさせることなく、水槽内の肥料分は水草にどんどん消費させ初めから苔を付けさせないこれが綺麗な水草水槽を維持する奥義その2です。

では具体的にそういった水槽の作り上げ方について簡単に説明します。

まず、水草水槽というのは最低限2つの段階を経て作り上げられることを理解して下さい。

まず初めの段階は濾過及び底床の作成期間です。
濾過の作成についてはよしを’S濾過話(基礎編)を参照して下さい。
この段階で濾過部分と同様底床(水草を植える砂利)にも土壌バクテリアを繁殖しやすいように、根張りが旺盛で余った肥料分の吸収の良い丈夫で安い有茎草を植え込みます。
考え方としては濾過の場合のパイロットフィッシュと全く同様でパイロットプランツと呼ばれます。
ハイグロフィラのたぐいなど(新しい底床でも良く育つ)草をなるべく多めに植えて底床に根を張らせます。
そうすることによって底床にも土壌バクテリアが繁殖し肥料分を水草が吸収できる形に分解したりしてくれるようになります。

この第1段階では濾過を早く安定させる事と底床のバクテリアが良く繁殖することのみ考えて多少の苔は放置します。
もちろんこの段階で肥料は不要です、魚に対する餌を与えることで水草の肥料にもなります、この時期は水槽の環境が全くと言っていいほど出来ていませんから水草が育たなくても当たり前ですし、苔や油膜・白濁が発生するでしょう。

土壌バクテリアを繁殖させるため濾過と同様底床をいじったり植え込んだパイロットプランツを植え直したりと言ったことはなるべくしない方が良いでしょう。

色々とやりたい気持ちが沸いてきますが、今後の水槽の善し悪しを決める大切な期間です、無茶をして魚を大量に導入したり赤い水草を追加したりするのはやめましょう。

じっと我慢のまま1〜2ヶ月経過したところで濾過が出来上がっているかどうかを必ずチェックして下さい。
換水から1週間経過しても亜硝酸濃度が安全な値を示しているかどうかがチェックポイントです。

今までの手順通りこなしていればハイグロフィラ等はのびきってかなり汚らしくなっているでしょう。
それと同時に濾過バクテリアと土壌バクテリアがある程度繁殖しているはずです。

このチェックポイントを無事クリアしたならば初めて次の段階に移ります。
もし亜硝酸濃度が上がっているようなら、さらにそのまま換水を続け維持します。

さて第2段階です。
ここからが新たな出発です、もし現在濾過が出来上がっている水槽を持っていて水草が綺麗に育たず苔だらけだった場合もこれ以下の方法で新たな出発をして下さい。

ここからは一気に苔をブチのめして回復する隙を与えず元気な水草をがんがん入れるのがポイントです。

まずガラス面や水槽内の器具に付いた苔を落とします、食器洗い用の柔らかいスポンジやプラスチックの三角定規でこすれば落ちるでしょう。

それまで植えていたパイロットプランツは一旦水槽から全て抜きます。
綺麗な状態であれば後でもう一度植え直しますが苔が付いた葉などは全てカットします。
伸びてしまって汚くなっている草も下の方をカットして捨てれば良いでしょう。

そうして水草も全部抜いた水槽の中で底床を軽くかき回して少しだけ掃除します。
あくまでも軽くなので手で3回ほどかき回す程度で十分です。
意外と水は黒く濁りますがあまりやりすぎないようにしましょう。

汚れが出た水槽の水は半分から2/3を捨てます。
かわりに温度合わせをし塩素中和した新しい水を入れます。

もし揃えるつもりの装備を初めに用意していなければこの時点で全て揃えるようにしましょう。
ここから息するまもなくず〜っと水草を元気にし続けなければ意味がありません。
「もう少ししてから照明を増設しよう」とか、「もう少ししてからCO2を添加しよう」という考えは苔に付け入る隙を与えることになります。
是非とも第二段階への移行は全ての装備を調えてからにしましょう。

基本的な装備の一例としては60cm水槽で濾過は2213クラス、照明は20w蛍光灯4本、CO2は小型ボンベ大型ボンベ又は発酵式で強制添加、これだけ揃っていればまずOKです。

新しい水が入ったなら一気に大量の水草を導入します。
この時点で植える所がもう無いと言うぐらい植えて植えて植えまくりましょう。
お金がなければ借金をしてでも草を買いましょう。
もちろんトリミングして残ったパイロットプランツも植えましょう。
何が何でも元気な草を大量に入れて下さい。
今日は5千円分の草を入れて様子を見て、上手くいきそうだったら来週にまた5千円等という方法は絶対にしないで下さい。
そんなやり方では結局何万円使っても水草は綺麗に育ちません。
初めから1万円でも2万円でももう植えられないと言うぐらいまで植えましょう。

もちろんこの段階では高価な難種を導入するのは控えた方が良いです。
そんな資金があるのなら丈夫で育てやすい草をなるべく沢山入れましょう。
それらの草が元気に育って水槽が綺麗に出来上がったら赤い草でも難種でも後から追加すれば良いんです。

個人的にはこの時点で入れる草はミクロソリウムを多用することをお勧めします。
比較的葉からの養分吸収が多いので底床が十分こなれていなくても育ちますし、光やCO2の状態が不足気味でも大丈夫な草で、高温と極度な水の汚れさえなければ順調に育つでしょう。
ただこの草は大きな株の場合結構良い値段がします、ちょっと財布に厳しいですがチームにかなり貢献する有力な助っ人外人だと思って思い切って買っちゃいましょう。
レイアウトを作るにも簡単にボリュームが出る便利な草ですし、一旦上手くいき出せば良く増えてくれます、増えた草は次の水槽を作成するときや友人知人にあげましょう。

この時点でエビやオトシンといった苔を食べる生き物を同時に入れて良いでしょう。
通常では60cm水槽にエビとオトシンそれぞれ10匹程度ずつで大丈夫ですが、1〜2週間様子を見て苔が少しでも増えるようで有ればエビをさらに10〜20匹追加すれば良いでしょう。

最後に肥料についてですが、個人的には底床肥料の使用はこの後水草が元気に育ちだしてから行へば良いと思います。
セットする時点から肥料分を含んだ砂利を混ぜてセットしたり肥料をミックスしてセットする方法をショップや雑誌では勧めていますが、失敗する確率が高いのでセットするときには肥料は使わないのが良いと思います。
どうしても使いたいのなら前述の第2段階に入る時に軽く底床をかき回して洗った後に説明書きの使用量の1/2程度を入れるぐらいにとどめておいて下さい。
第1段階のセット時には使わないで下さい。

最後に、めでたく水草の勢力で苔を押さえ込めたならしばらくして今度は水草に肥料を与えなければならなくなるでしょう。
園芸用肥料も水草用肥料も成分も効能もほぼ同じなので、値段の安い園芸用肥料を使った方が良いのですが、そのためには沢山ある園芸用肥料の中で何を選択すべきかとか使用量をどう見極めるかといった知識が必要になります。
もしも、そういった知識が無く簡単お手軽に使うにはやはり水草用として販売されている肥料が良いでしょう。
(水草用肥料を一箱使い切る頃にはそういった知識も身に付いているでしょうから次に買うときには園芸用肥料を買えば良いでしょう。)

全くなにも分からないならテトラのイニシャルスティックがお勧めです。
昔からポピュラーな商品ですしショップでの取り扱いも多いです。
一つ一つが小さいので広い範囲に少しずつ使えます。
液体肥料も水草の種類によっては有効です、少し高いですがADAのブラティーシリーズのSTEP2(別にSTEP1と2と3を使い分ける必要性は無いと思います、初めからSTEP2でも十分)なんかは使いやすいです。
水槽内に常時入れておくアンプルタイプの肥料はやめた方が良いです。
入れる量が自分でコントロール出来ないし、本当に効果のある肥料なら(少しずつ添加されるとはいえ)あの量の
添加をしたら苔だらけになるはずです、苔だらけにならないと言うことはかなり薄められてほとんどが水なのでしょうから・・・

肥料の使用というのは水槽が綺麗になった次に越えるべき難しい問題です。
まず第一に肥料とは水草が調子の良いときに使う物であって水草が調子の悪いときに使う物ではないと言う事を十分に理解して下さい。
使用する場合には説明書きの1/3〜半分の割合で丁度良いぐらいです。
ほぼ100%の確率で説明書きの分量を使用すると使い過ぎになります、メーカーは沢山使わせて早く消費してもらおうと多くの量を使わせる目的で使用量を決めています、絶対に信用してはいけません。
草の量や状態で肥料を与えるべき分量もかわります、何も分からない状態で行うのなら説明書きの1/5程度の量から始めましょう。

施肥のし方については技術集の「施肥の仕方」も参考にしてください。


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