水草が上手く育たなかった場合、特にそれが初心者である場合にはまず肥料をと考えがちですが、その判断は正しくない場合が多いです。
水草に白化現象が出たり水草が枯れたり育たなかったりするのは、肥料が不足している以外の原因である事の方がはるかに多いです。
特に新しく買ってきた水草がそうなる場合はかなりの確立で肥料不足以外の原因であると言えます。
まず初めにチェックすべきは設備です。
等です。
もちろん上記の光量や二酸化炭素の設備は必須の物ではありません。
上部濾過装置にCO2無添加で綺麗な水草水槽を維持している方も少なくないです。
ただ光量が少ない水槽では光量が少なくても育つ草を、CO2無添加ならCO2をそれほど必要としないような草を選び、水槽全体のバランスに対して光やCO2のバランスを上手く取らせるという維持の仕方が出来るといった知識や経験・技術が必要になります。
そういった知識や技術が無く、取り敢えず見て気に入った水草を植えてそれが上手く育って欲しい場合にはやはり設備に頼らざるを得ません。
そういった場合には光・CO2の順で上記基準をクリアしているかをチェックしましょう。
まずここまでをチェックして手当するべき所がある人は、ある意味まだこれから先にある苦労や苦しみを知らないと言って良いでしょう。
そういった人はこれ以降を読まなくてもOKです。
手当すべき所を手当し、そしていくらかの水草が綺麗に育ち水草の素晴らしさを経験し、そしてそれと同時に設備が満足でもどうしても上手く育たない草に遭遇し、素晴らしさと同時に苦労や苦しみを知った段階でもう一度ここを訪れると良いと思います。
さて、ここから先が設備が満足でも上手く行かない場合のアプローチの仕方です。
ではここで初めて肥料か?
いえそうではありません。
やはりここでもよく知っておかなければならないのは水草が上手く育たない場合の原因は肥料以外の場所に有ることが多いということです。
ただここで言う(設備が満足している場合の)肥料不足以外の原因というのはその特定が非常に難しく、何が原因であるか分からない場合の方が多いですし、一言で「底床のこなれ具合」等と呼ばれる、”底床の年期”のような物(すなわちそれを解決するためには”時間”という人間にとって変化させることが出来ない物)が原因である場合も多く、それを突き止めて解決するのが事実上不可能である場合も少なくないです。
そういう場合っていうのは、なんというか、水草が自分の水槽の今の環境と相性が合わなかったと言うのが一番納得出来る説明となるのではないでしょうか。
非常に無責任でいい加減な考え方かもしれませんが、そういう場合は水草が自分の環境を気に入ってくれなかったと受け止めれば良いのではないかと思います。
(もちろん、照明を変えたり水質を調整すれば上手く育つ場合もありますので、なんでもかんでも何もせず簡単に諦めるのが良いという訳ではありませんが、どうやっても上手く行かない場合も多いです、その様な場合に必要以上に食い下がって不必要な肥料を施肥したり、さわりすぎて水槽のバランスを崩してしまうよりはある程度の諦めが必要という意味です。)
それに設備が間違っていたり、維持の仕方が間違っていたりしない限りは何種類かの水草はちゃんと育つはずです、もし苔がひどくて入れた草が全部ダメになるようなら奥義の二つ目「初めから苔を寄せ付けない」を参考にしてみて下さい。
そうはいうものの、買ってきた水草が上手く育たないと何かしたくなるわけですが、初心者が一番やってしまいがちな対処が闇雲に肥料を入れるという行動です。
確かに陸上の園芸なら植物が光合成に必要な光は太陽から供給されますし、二酸化炭素は空気中に存在しますから、不足する可能性があるとすれば水と肥料だという事になり、育ちが悪いときの対処として肥料を与えるという考え方はそれほど間違ったことではないのかもしれません。
(あくまでも水槽内の植物と比較してという前提であり、陸上の園芸であっても不調=肥料を与えるという安直な対処は不正解かもしれませんが・・)
水草を始めたばかりの人はそういったイメージがあるので水草の調子が悪いと、どうしても肥料を与えれば回復するのではないかと印象を持つようですが、ほとんどの場合それは間違った対処となります。
自分が風邪をひいて40度の熱がある時に分厚いステーキを枕元に持ってきて「これを喰って元気になれ〜」って言っているような物だと考えてもらえば分かりやすいでしょう。
水草の世界では肥料は足りているのにそれ以外の環境が合わずに、存在する肥料が吸収消費することが出来ずに枯れてしまう場合の方が多いです。
そういった反面やはり本当に肥料が不足したのが原因で育たない場合も存在します。
ですから、まず初めに違う原因を考えるべきであることは確かですが、最終的には肥料不足かもしれないというチェックポイントは残ります。
そうした場合、肥料不足が原因であるか、それともそれ以外の原因なのかを見極める必要が出てきます。
そういった場合には調子の悪い草の根本から少し(5〜10cm程度)離れたところに、イニシャルスティクのような固形の肥料をほんの少し(1粒とか1かけらとか)を入れてみて、しばらく様子を見るという事を行います。
その後少なくとも1〜2週間状態を観察し、もし調子が良くなるようであれば肥料を入れたのが正解=肥料不足だったと判断されます。
そうして肥料不足が確定したら適度な量の肥料を追加するわけです。
適正な肥料の量というのは一概には言えませんが、有茎が密植されている場合は5cm四方のエリアにイニシャルスティックを1個ずつ入れていく程度が目安と考えて良いでしょう。
(もちろんこれも最初は少な目に入れて状況を見ながら丁度良い分量を見極めることが大切です。)
ただし、本格的に底床肥料を入れたなら
それから最後に水草にとっての環境の変化というのも理解しておきましょう。
お店で売っている水草の多くは通常の園芸と同じように気中栽培といって普通の畑のような状態か、または根だけが水に浸かっているような状態で、茎や葉の部分が空気中にある状態で栽培されている事が多く(そういったものは気中葉とか水中化していないと表現される)、そういった状態の草を水槽に入れるというのは言ってみれば、日本人が急に外国に連れて行かれてそこで生活する事を強制されたのと同じ様なもので、環境が変わったり食べ物が変わったり、言葉が理解できない等が原因ですぐにはなじめなかったり体調を崩してしまったりもするでしょう、水中化していない水草が水槽に入れられた場合もそれと同じ事が起こるわけです。
これについては、効果的な対処法というものは有りません。
もちろん、同じ草でもまれに水中葉のものを売っていたりしますからそれを買ってくれば自分の水槽への適応は水上の物を買ってきた場合より楽なはずです。
また、お店で販売しているものより他人の水槽で増えた草の方が(もともと水槽で育っているので)はるかに水槽での適応は早いです。
しかし、どうしても水上の物しか手に入らない場合は水草の体力や適応力に頼らざるを得ません。
そういった場合は、種類によっては”水中化するのに上手く行く確立は3割”等と称される物も存在します。
(もちろん簡単に水中化する種類もありますが・・)
そういった水草にとっての環境変化も(水草が育たず枯れてしまう原因の一つとして)理解しておかなければなりません。
ということで色々と書きましたが、結局水草が上手く育たない時って当たり前の部分しか対処の仕方ははっきりとしたことが言えないということです(^^;)
どうして気に入らないのか、どうして機嫌が悪いのかさっぱり分からない、他人の水槽ではあんなに綺麗な姿を見せてくれるのに、どうして自分の水槽では上手く行かないのか?
とまあ、言ってみれば水草が育つかどうかって女心と一緒(又は女性にとっての男心と一緒)で、なかなか理解できない所があるものです。
だからあまりに神経質になりすぎない、異性と同じで相性があるんだと思ってある程度”去る者は追わず”的な考え方も必要なのではないかと思います。
水草水槽は本来心に安らぎを与えてくれる物だと思います。
あまりムキになって追いかけすぎると安らぎもなにも無くなって、胃炎にでもなりかねないですから、そんなことになってはどうしようもありません。
水草が上手く育たないときにも管理者の心には余裕をもって、おおらかな気持ちで対処されるのが良いのではないかと思います。
追記
このページは予告時点で「どんな草だってへっちゃら」としていたものをタイトルを変更して作成したものです。