アクアリウムを長くやっていると経験する可能性が多い水槽の引っ越し。
でもこんなのどうやって引っ越しすれば良いの?
魚は死んでしまわないの?
折角繁殖した濾過バクテリアはどうなるの?
と、なかなか難しそうですがそれほど難しく考える必要は有りません。
実際私も自分自身の引っ越しを含めて友人アクアリストの引っ越しなど、もう何度も経験しています。
これは東京から北海道へ引っ越しをするなどを想定しています。
基本的には近距離でもこの方法で良いのですが、距離が短くなれば色々なところで遠距離に比べて手抜きが可能になるのです。
この場合水槽や周辺機器などの運送は引っ越し業者が行うことを前提にしています。
引っ越し業者が運送する場合、水槽は全くの空になっている事、底床や水草、魚は我々の手で完全にパッキングされている事が条件となるでしょう。
食器やタンスの中身を業者がパッキングしてくれるサービスの場合も水槽までは面倒を見てもらえないと思います。
この辺は業者毎に取り扱いが違うでしょうから引っ越しの申し込みをするときに業者に確認した方が良いでしょう。
完全にパッキングしてあったとしても中身が生体となるとトラックに乗せてくれない業者も有ると思います。
まず、熱帯魚ですがそれについては「魚の発送の仕方」を参考にしてパッキングをします。
バクテリアを含む濾材についても扱いは熱帯魚と同じです、どちらも呼吸して生きている生き物ですから同じ考えでパッキングすればokです。
水草についてですが、水草の大敵は乾燥と蒸れです。
水槽から水草を丁寧に抜きながら大きなゴミ袋を中に敷いたダンボール箱の中になるべく綺麗に収まるように入れていきます。
水は入れませんが、適当な量の草を入れたなら水でしめらせたキッチンペーパーなどを入れて乾燥しないようにします。
流木に活着したような物は全体をしめらせたキッチンペーパーでくるんでビニールにいれます。
流木物を他の草と一緒に入れると輸送中に流木があばれて他の草を痛めますので、それだけは別にします。
流木物はダンボール箱の中を小さく区切ったりして入れればいいでしょう。
全ての草を入れることが出来れば袋の口をしめてダンボールにふたをします。
魚と草が水槽から出ればあとは底床だけです。
底床は少し残念ですが多少の土壌バクテリアは諦めます。
底床は水槽から取りだしザルで水を切ってビニール袋に詰めます。
重さがかなりあるので少しずつ小分けにした方が良いでしょう。
これで重要な物は全てパッキング出来ましたので、あとは照明やら濾過器を水を切って壊れないように梱包すればokです。
CO2のボンベは業者によっては輸送してもらえない場合があるので、業者に確認しておきます。
CO2ボンベは夏場高温になる車内に放置すると高圧になりすぎて安全弁が開きガスが噴出するという事故もありますので、夏場の輸送には注意が必要です。
夏場は水草が煮えてしまうこともあるので到着後はなるべく早く袋の口を開けて、水を張ったバケツや衣装ケース等に移しておきます。
水槽のセッティングの方に夢中になって水草を開けたときには大量の”おひたし”が出来ていたという事になりかねないですから。
魚も同様到着したらすぐにバケツなどに移して保温とエアレーションをしておきます。
自分の車や自分で運転するレンタカーで自分の手によって水槽の引っ越しをする場合の想定です。
遠距離の場合と同じ方法でやればいいのですが、自分で運ぶ、距離が比較的近いということで、幾分手抜きが出来ます。
魚についてはバケツの中にゴミ袋を入れてその中に魚を入れ口を軽く縛る程度の対応でokです。
近距離短時間ですのでエアレーションとか保温とかそれほど気にする必要はないです。
半日程度ならこれでOKです。
濾材についても魚と同じ扱いか、又はパワーフィルターならダブルタップで閉じれば水が入ったまま丸ごと輸送できます。
水草の梱包も遠距離と同じで良いのですが全てを大型の衣装ケースで代用するとか、かなりいい加減な梱包でも良いでしょう。
底床も土壌バクテリアのことを考えて魚と同様バケツに入れた袋でひたひた位の水と一緒に入れられればさらに好ましいです。
非常に近距離で人手があり危険をかえりみないのであれば、底床ぎりぎりまで水槽から水を抜き、底床はそのままで水槽を持ち上げて運ぶことも出来ます。
特に60cm水槽などではこれで充分運べます。
ただしガラスの大型水槽の場合はねじれた状態で中から重量が掛かると割れたりしますから充分注意してください。
手抜きをするにしても半分ぐらいの底床はバケツに出して残りを水槽ごと運ぶなどした方が良いですね。
どちらの場合も到着したらすぐに水草の梱包を開け水道水(保温や塩素中和も不要)を張ったバケツや容器に投げ込んでおきます。
魚は輸送時に入れた水ごと綺麗なバケツや容器に移しヒーターを入れエアレーションしておきます。
その後通常の手順で水槽をセットします。
水槽のハードウエアがセットできたら底床を入れて温度合わせして塩素中和した水を水槽に入れます。
余裕があれば元の水槽の水をなるべく多く運んでおけばそれを新しい家の水槽に入れることが出来ます。
濾過装置をセットして稼働させ温度が安定したら魚を入れます。
このときも温度合わせ水あわせを慎重にした方が良いです。
引っ越しで手早くやらなければいけないのはここまでです。
引っ越しは非常に重労働ですから、ここまですればもうくたくたじゃないでしょうか?
水草は(一部のデリケートな物を除けば)水につかっていればCO2や光が無くても保温しない状態で2〜3日は問題がありません。
最悪の場合バケツに投げ込んだままの状態や、とりあえず出来上がった水槽に投げ込むだけでこの日を終わっても良いでしょう。
水草の植え込みは翌日にでもゆっくりやればokです。
もちろんCO2系統の設備なんかも水草が植え終わってからゆっくり設置すれば良いわけです。
上手くすれば濾過バクテリアなどほとんど影響なく引っ越しする事が出来ます。
水槽のバランスが変わりますのでバクテリアに影響が出たり白濁したりする可能性もありますが、慌てて換水したりバクテリアの元を投入したり薬品を投入するとかえって逆効果だったりしますので、亜硝酸などの水質チェックを行い問題がある場合のみ1/3換水をするなどして、必要以上の刺激を加えないようにしましょう。
元の水槽がきちんと安定した物であれば一時的に白濁しても1〜2週間程度で回復するはずです。
多くの場合引っ越しでかなり大きな刺激を水槽に与えているわけですから、ちょっと白濁しただけで慌てた管理者がさらに全換水するなどして刺激を追加したりする事の無いよう、十分理解しておく必要があります。