「ビッグマックは平日半額」なんてキャッチコピーはかなり一般の人に知れ渡ってきた今日この頃ですが、やはりそうなんですよね、競合するロッテリアも平日半額という価格設定をするだけではなく「土日も半額」なるキャッチコピーでビッグマックのさらに上を行く値下げを実施しているようです。
もともとファストフードというのはコンビニエンスの軽食に押されて、利用者が減少しているという苦しい状況だったので、最近の不況やデフレ傾向に後押しされてこんな商売をせざるを得なかったのでしょう。
”世の中デフレは良くない”というイメージが強いようですが、私はその要因がはっきりとしているものなら仕方がないのではないかという気もします。
結局はバブルの頃に悪戯に土地や株の価格を高騰させ、その差額で飲み食いして遊んでしまったため、その前借り分の小遣いが減額されているだけではないでしょうか?
私は経済学に詳しいわけではないので、素人の勘違いもあるかもしれませんが
バブルという現象は
- Aさんが持っていた缶ジュースをBさんに100円で販売しました。
- Bさんはそれを110円でCさんに販売しました。
Bさんはこの時点で仕入れの100円に対して販売価格の110円との差額である10円の利益を得ます。
Bさんはその10円の利益でガムを買って食べました。- Cさんはそれを120円でAさんに販売しました。
Cさんはこの時点で仕入れの110円に対して販売価格の120円との差額である10円の利益を得ます。
Cさんはその10円の利益でチョコを買って食べました。- Aさんはもう一度その缶ジュースをBさんに130円で販売しました。
・
・以下1〜4の繰り返し
AさんもBさんもCさんも缶ジュースの値段がいくらであろうとも次に購入してくれる人が居ると思って必ず購入し、そしてそれに利益分を上乗せして販売する事を続けました。
みんなが利益はいくらでも出ると確信していました。
ところがある時Bさんはふと気が付きました。
こんな事っておかしいのでは?
そしてBさんは1缶5,800円になった缶ジュースをAさんから購入することを断りました。
これがバブルの崩壊であり当然Aさんの手元には1缶の缶ジュースとその支払代金5,700円の負債が残りました。
当然もともとの缶ジュースは100円ですし、インフレ分を含めてもその缶ジュースの本当の価値は110円程度しかありません。
世の中には、というか銀行には本当は110円の価値しかないのに5,700円で流通していた缶ジュースと、Aさんへの5,700円の債権が残りました。
Aさんが破産すれば缶ジュース1缶を銀行は借金のかたとして差し押さえ、それを競売して債権の相殺にするのでしょうが、そもそも110円の価値しかない缶ジュースがそれ以上の値段で競売できるわけもなく、銀行はAさんには破産してもらっては困るし、もし破産したとしても缶ジュースは競売出来ない状態で銀行に残っている、というのが現在問題となっている不良債権の問題でしょう。
資本主義社会では売値は需要によって決まるというのは大前提ですが、さらにその前提となるのは”価格はそのものがもつ価値によって決まる”という事があると思います。
いくら購入者が居るからといって100円の缶ジュースを5,700円に高騰させてしまったことに間違いがあるのです。
賢明な人なら分かると思いますが、思い直して正常な取引に戻そうとするならば、缶ジュースから5,700円という値札をはがしてそれを110円に書き換え、新しく110円で流通させるしか、健全な経済状態を取り戻す方法はありません。
一部の政府よりのエコノミストは土地の値段がこのまま下がり続けると良いことは起きないとして、デフレが続くと悪いことが起きるというイメージ作りをしていますが、他のエコノミストは、「その土地がもつ本来の価値まで価格は下がらないことにはバブルの精算は終わらない」と言っている人も居ます。
また、同時に日本では大きな流通構造変化が起きています。
インターネットの普及や宅配業務の進歩などにより通信販売という業態がよく利用されるようになりました。
無店舗でも通信販売を上手く利用してもらえれば商売の仕方が良くない店舗販売のお店なんかよりも景気が良いという場合も有るようです。
販売力や財力のある所は元々の店舗による売り上げに加えて、通販による全国のお客さんを相手にできるわけで、上手くすれば競合店に大きく差を付けられる場合も有るようです。
当然アクアリウムの世界でも通販を行っているショップは多いですし、中にはその辺のお店で買うよりも安い値段で手に入ることも少なくないです。
流通量や販売量の少ない地方の町のアクアショップなどは送料を差し引いたとしても値段では勝ち目のない事は明白です。
結局の所、不況は続き消費者の財布の紐は非常に堅い、おまけに流通の構造だって変わりつつある、では定価販売で商品が一月に一つも売れないよりは、儲けが少なくなっても一月に3つの商品が売れた方が良いという理論から安売りを始めるお店が出る。
あるお店が安売りを始めると近隣の同業店では先のマクドナルドとロッテリアと同じく、対抗して安売りをするしかなくなる・・・
最近起こっているこういった現象を価格崩壊と呼んでいます。
これらの事象はアクアリウム業界でも避けることは出来ず、アクアリウムグッズもマクドナルドではありませんが非常に安売りしているお店も多く成ってきているのではないかと思います。
ユーザーの財布の紐が堅ければ、それを少しでも緩めるために今までにないぐらいの値引きだってしようとするアクアショップも多いようです。
さてさて、このアクアリウム関連へも波及しそうな価格崩壊、それは利用者として単純に歓迎すべき事なのでしょうか?
マクドナルドやロッテリアの半額セールは無条件にありがたいですし、ユニクロだってああいったメーカーが有ることはユーザーのメリットになることはあってもデメリットに成ることは無いでしょう。
じゃぁ、アクアリウム用品や魚や水草だってどんどん安くなれば良い?
本来的にはYESでしょう。
しかし、ここには大きな問題があります。
通販が拡大したり、安売り店が台頭するということはアクアリウムの小売りルートが一部に集中するという事になります。
結局都会の大型店や有名店が生き残り地方のアクアショップや町の小さなアクアショップはどんどん減少して行くでしょう。
こうなってしまうと我々にしてもありがたい状況とは言い難いです。
安くはなったもののちょっと餌を買おうにも通信販売で送料が掛かった上に手元に届くのは2〜3日後と成ってしまいます。
またハードウエアなら製品はほぼ均一ですし、それがどれだけ遠くの倉庫から送られて来ようが関係有りませんが、我々の趣味で扱うものは主にハードではなく生き物であるため、その質や受け渡し方法や輸送時間といったものが非常に重要になってきます。
結局の所日本全国どこの町でもそれなりのアクアショップが無ければ我々としても困ることになります。
価格崩壊したり、通販が台頭してくると我々利用者としても一時的にはありがたくても、それが原因でアクアショップやアクアメーカーが無くなってしまうと、それ以上のデメリットも起こりかねないということになります。
では我々は価格が安くなるかわりにショップやメーカーが少なくなってしまうことが困るなら、アクアリウム関係の商品の価格崩壊を拒否し、アクアリウム関連の価格は以前と変わらないような水準を保ち続けることに甘んじなければ成らないのでしょうか?
よく、売り手側の人の意見として「アクアショップが無くなって困るのはアクアリストだ、それが困るならアクアリウムをやっている者は、それを承知してアクアリウム業界だけが価格崩壊しなくて済むようにユーザーが支えていなければ成らない」という意見を述べる人が居ます。
日本の某アクアメーカーが小売店に対して定価販売をお願いする脅しのような文章を送りつけたという事が有ったのは、インターネットにアクセスできるアクアリストなら多くの方がご存じだと思いますが、たぶんこのようなことを考えてアクアリウム業界に起ころうとしている価格崩壊を何とかして避けようという考えからではないかと私は推測します。
しかし私はその考え方には反対です。
どうして価格崩壊してショップやメーカーが無くなるということと、過去の値段のままアクアリウム用品の価格を聖域として利益率が高く適正とは言い辛いもののままでいるという事の二者択一に成るのでしょうか?
どんなに頑張っても流通構造の変革に逆らうことは出来ないでしょう。
どこで買っても均一な製品の器具類は通信販売での購入が多くなるでしょうし、あまり使う意味のない添加剤類はますますディスカウントショップなどで安売りされるように成るでしょう。
何も分からない初心者に効果が疑わしいような消耗品を買わせたとしても、2度目からは同じ商品をディスカウントショップで購入されるでしょう。
結局アクアショップもアクアメーカーもこれまでの儲け方では駄目なのだと思います。
価格崩壊してショップが無くなるのが嫌なら定価でも黙って購入しろと言う考えは、まさに自分たちの金儲けのやり方を変えないで、全て周りに都合良く自分たちの商売の仕方に合わせさせようという、全くばかげた理論にしか思えません。
ユニクロの社長は最近の不況やデフレ傾向がむしろ歓迎だというような発言をしております。
そのような環境の中、いち早くそれに対応した商売をすることで、それらのマイナス要素をビジネスチャンスに変えてしまうことが出来るというのがその理由だそうです。
これからのアクアショップやアクアメーカーはディスカウントショップや通販では出来ないサービスを行い、それにより利益を得るように営業の方法を考える必要があると思います。
定価販売を強要するような文章を自分の大切な顧客であるアクアショップに送りつけた某アクアメーカーも、これまでの商売の方法を変えずに価格崩壊を回避するための悪あがきをするのではなく、こんな時代だからこそマイナス要素をビジネスチャンスに変えられるような新しい発想をするべきではないでしょうか?
不況の時代が高品質低価格を求め、それにマッチしたユニクロが爆発的に売れました。
すさんだ現在の社会は癒しを求めています、もう一つ何かの発想を転換すればアクアリウムも爆発的に人気が出てもおかしくないように思います。
最後に我々ユーザーとしてもアクアメーカーやアクアショップが時代に合わせて業態を変化させるなら、もちろんそれに協力するための負担は惜しむべきではないと思います。
現在でも自店で購入していない物の質問をするお客さんが居て困るというショップ関係者の意見を聞いたことがありますが、これからは通販で購入した器具の使い方が分からないといった場合でも、どんどんショップで指導・サポートするべきだと思います。
そしてその事に対するサポート料を頂けば良いのです。
日本人はとかく顧客サービスやサポートというのは無料だという考えがあるようですが、現在ではパソコンソフトを買ってもサポートは別料金となっているのが当たり前の時代です、ショップのもつ技術力やサポート力、情報提供などに関するソフト的なサービスに対する料金というのも当然支払うべきだと思いますし、それによって収入が有るということになれば魚が適当に死んだり、水草が適当に枯れたりして、魚や水草、あまり効果がはっきりとしない消耗品をどんどん買ってもらえば良いという考えから、きちんと技術指導して技術力のあるショップという印象を持ってもらい、サポート料金で利益を出そうという考えになるショップも少なくないのではないかと思います。
課外授業の最終回でも述べましたが、当然我々はアクアショップもアクアメーカーもどんどん繁栄してくれることを望んでいます。
その為には適正なコスト負担は当然アクアリウムを楽しむ者としての義務だと思います。
しかし時代は変わっています。
流通構造などの変革に対応してマーケットの構造を変え、価格崩壊や通販を排除するのではなく、それらをしなやかに受け入れながら今までとは別な方法で利益を出し、もっと多くのアクアリストを生み出し定着させ、もっともっと儲けてほしいと思います。
過去のやり方を当然と考え価格崩壊や通販・ディスカウントショップをどうしても排除しようと考えているメーカーは、5年後の存在が難しいのではないかと思います。
そのような考え方しか持てない某メーカーの方々へは「チーズは何処へ行った」を読む事をお勧めします。
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