止水域と水中のバランス(2001/02/12記)

有明海の諫早湾に堰が出来て4年、いよいよ本格的に堰を設置したことの影響が出だしたのか、今年は海苔の生産がこれまでになく不作だとの事、このところ連日テレビのニュース番組は報じています。

海苔が不作になった原因は赤潮や植物プランクトンの異常発生によって、湾内の水の栄養分がそれらに吸収され、結果海水が今までになく貧栄養に成ってしまったため、海苔が生長する為の栄養素が不足したらしいです。

かなり大きな問題であるというふうに言われだし、政治家の先生などは「堰を作る前にはこんなに大きな変化が有るとは思っていなかった」などと平然と言っている頭の良〜い方まで居るようです。

しかし、一番被害を被っているのは有明海で漁業に従事していた人たちです。
話によると例年での海苔の売上高は14億円、それが今年は4億円に満たないということらしいです。
漁業に従事している人たちは今までの宝の宝庫だった海と比較して、現在の有明海の悲惨さを口々に訴えています。

しかし、私はふと思いました。
我々アクアリウムをやっている人間でも、2〜3年アクアリウムに接して色々な事を学んでくれば、水槽内やフィルター内に仕切を設けて止水域を作ると、それなりの変化が有ることは容易に理解できるようになります。
アクアショップはアクアリストのプロではありませんが(アクアリウム課外授業「アクアリウム用品の信憑性」参照)、漁業を営んでいる人は完全なるプロのアクアリストだと私は思います。
袖の下をいくら貰えるかということにしか頭が働かない政治家の先生方はともかくとして、有明海のプロのアクアリスト達は堰が出来るまでにどうしてそういうことに気が付かなかったのでしょうか?

たぶん、諫早湾の対岸あたりの漁師達は、自分たちの漁場からは遠く離れた場所の事だから、まさか対岸に出来る堰によってその影響が自分たちの漁場まで及ぶとは思わなかったのではないでしょうか?
そして諫早湾の近くの漁師達は、国や自治体からの補助金や援助金・補償金を手にして、将来被ると思われる被害の額はその程度のお金で納得できる程度のものだと軽く考えていたのかもしれません。

いずれにしても有明海に面した漁場の漁師達は多かれ少なかれ今直面しているほどの影響が有るとは思わなかったというのが結論ではないでしょうか?

趣味でアクアリウムをやっている者でさえ止水域を作ったり水の流れを変えることによって、水中のバランスが変わり変化が有ることぐらいすぐに分かることなんですから、有明海のプロのアクアリスト達や堰の建設のために環境調査などを行った学者さん達には、もっと以前に現状起こっているような重大な変化が起きることに気が付き、堰の建設に歯止めをかけるべきだったのではないでしょうか?

結局自然のバランスについて軽く考えた人達は有明海に大きなしっぺ返しを食らわされたって事ではないでしょうか?

筆者後記

ここに記述してある内容は、実際に今現在有明海で漁業を営み重大な被害に見舞われている方々にとっては非常に無責任でいい加減で好き勝手なことを言っているのかもしれません。
また、もし甘く見ていたのは事実だったとしてもそれにより被害を受けて死活問題に直面している方々に対して、遠く離れた町に住むタダの会社員(私のこと)に批判されるいわれの無いことも十分理解しております。
この文章は被害を受けた漁業関係者を非難する目的で書いているのではなく、アクアリウムを通して自然の大切さや、自然のもろさ、自然界の絶妙なバランスをもっと考えるべきだという事を意図して書きましたが、記述内容に関して気分を害された地元の漁業関係者の方がいらっしゃいましたら事前にお詫び申し上げます。

尚、本件に関しましてこれまで通りコラムを読んだ感想などをアクアテロリストの広場に投稿頂いたり、メールでお寄せ頂くことは何ら問題有りませんが、この様な問題に関する議論を交わすことは私の望むところでは有りませんので、投稿やメールを頂いても正面からそのご意見ご感想に対応する返答を行わない場合が有りますので、予めご了承下さい。
(要するに自然保護問題で泥沼の議論を行う事は望まないということ。)
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