よしを’S質問箱
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Q880.生物濾過の定義はあるのですか?
【仁志村さんからの質問】
アクアリウムでは「好気濾過」「嫌気濾過」と言いますが、それらはアクアリウム的に定義されている事があるのでしょうか?
類の言葉では、「生物化学」が様々な分野で聞かれます。「微生物処理」は汚水処理や河川浄化活動でも言い、その要は勿論「好気処理」「嫌気処理」です。アクアリウムのそれと同原理である事は、雑誌等でも良く紹介されています。街の下水道施設や、家庭の浄化槽設備では各々がその定義を示し、BOD(生物化学的酸素要求量)やそのppm等で処理基準値や指標を分かり易く定めています。これらは公的機関の制約から、逆に設定され易い面も有るでしょうし、公共用水域での希釈処理を見込むという逃げ道も用意されているという事もあるのでしょう。
以上には、正しくない表現もあるかもしれませんが、下水道と浄化槽にも絶対的容量差が有ります。アクアリスト(残念ながら私はまだ見習中)の皆さんのお話を伺っていると、アクアリウムでの「生物濾過」は、「生物化学的処理」の中の専門用語、と私は思うのです。せっかくの素晴らしい専門分野ですから、処理対象物質、処理能力値、指標、等をなんらかの形で一定基準の基に示す考えを伺いたいのです(「生き物の飼育」という観点からは、問題も有るかもしれませんが、前提がアクアリストの為のものなら、善意の道標となる筈です)。
もし現在迄にそれらを公論した方がいないのなら、本心を言いますと、よしをさんの「よしを式○○要領」等を是非、発案してほしいのです。

A880.濾過の定義他
「嫌気濾過」「好気濾過」というのは「好気性細菌による生物濾過」と「嫌気性細菌による生物濾過」の事であるため、正式に用語として認知されているかどうかは分かりませんが、アクアリウム以外の濾過(下水処理や汚水処理、工業廃水処理など)を本業としている方にも言葉は通用するため、用語的に不確定な意味合いや内容に解釈の違いがあるという問題は無いと思われます。

さて、今回濾過との比較として上げられているBODやppmという単位についてですが、ppmは単なる濃度でしかありませんし、BODはその水を生物濾過するためにはどれだけの酸素を必要とするかという意味の、言ってみれば水の汚れ度合いを示す単位です。

従ってBODやCODが大きければ水は汚れていると言うことが言えますが、その汚れを濾過するために必要な能力については、その大きさ等を示す単位や指標は存在しません。

たぶんご希望されているような指標は、BODが××の水100リットルを2213にシポラックスをセットした濾過装置に通過させると1時間でBODが×まで減少するというような公式かと思いますが、残念ながら今までそのような計測報告などは聞いたことがありませんので、今のところ我々一般アクアリストには知り得ることは不可能と思います。

ただ言えるのは濾過というのは非常に不確定な物ですので、もしBODを測定できる機材があったとしても温度や水の溶存酸素濃度や濾材の中を流れる水の状態や、その濾過装置をテスト以前にどのような環境で運転していたかなど、ありとあらゆる要素によって結果は変動してしまうため、特定の環境での実績は測定可能でも、その結果を一般的な他の環境に当てはめて同じ様な物と判断することは非常に危険ではないかと思います。

BOD自体もどのぐらい汚れているかと言うことを示しているだけで、その汚れの要素がどういった物であるかは表していませんし、逆に生物濾過というのは昔からアクアリストの間では、各家庭に存在する糠味噌の味が同じぬかを使っていてもそれぞれ味が違っているのと同じように、各環境によって何千、何万という種類のバクテリアが最も活動しやすい比率で均衡するように繁殖すると言われており、環境毎の違いや独自性があることが認識されております。

従ってある水をある環境で処理した結果は測定できても、シポラックス1リットルでBOD××の水を○○リットル処理できるという単純な算出は出来ないのだとおもいます。

いずれにしても現代のアクアリウムではBODを短時間に問題ない値までに濾過する能力は完全にクリアしているだけの能力を使用するのが普通であり、それ以上の何かを求められているのが現実だと思いますので、アクアリストとしては濾過というものの能力をどうとらえて何を求めるかという点にはまだまだ追求の余地は大きいと思います。

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