価格統制(2006/06/03記)

現在の日本の法律では「定価」と呼ばれるものや「メーカー希望小売価格」と呼ばれるものはあっても、実際には消費者が商品を購入する際には、価格は小売店の自由に設定して良い事になっています。
というか、逆に、小売店の決定する価格にメーカーが関与する事は法律で禁止されています。

しかし、現在の日本では生活用品などを含めて、多くのメーカーや製品で、安売りをされる事で、自社製品のブランドイメージの低下を招いたり、小売店の競争激化で小売店が減少してしまい、ひいては自社製品の販売チャネルの維持不能に繋がる事態を事前に回避したり、その他さまざまなメーカー側の不都合があり、価格統制が暗躍しているのが現実です。

まったく同じとは言いませんが、これと似たような事象に、公共事業の談合があります。

談合とは入札に対して事前に落札者を決め、さらに予定価格を事前に入手して、落札者はその価格ぎりぎりで落札すると言う行為です。

この行為、談合参加者にはどの様なメリットがあるかといえば、少しでも安いところに発注して、税金を節約しようと言う目的の入札というシステムを完全に無意味にさせ、出来る限りのお金を談合している者の間で分配出来るという事があります。

たとえば川に橋をかけるとして、役所はその費用に10億円用意しました。
もし入札制度が機能していたなら、入札業者はなるべく安く出来るよう、知恵を絞り、材料を吟味し、その結果5億円で橋が完成するかもしれません。
そして余った5億円で、さらに別な所に橋が出来てみんながさらに便利に成ったかもしれません。

ところが談合と言う奴は、この橋を必ず10億円で作ってしまいます。
入札業者が3社あったとして、この10億の橋はA社に、別な10億の道路整備はB社に、別な5億の下水道整備と5億の市民球場整備はC社にという風に、勝手に都合よく割り当てを決めて、最大限の金額を使わせると言う算段です。

これによって誰が損をするかというと、税金をなるべく効率よく使う事を不可能とされるので、本来なら2本の橋が出来るはずが、1本しか出来ない、下水道が地域の全域に整備されるはずが、中心地しか整備されない、本来なら整備されて歩道が出来ている道が何もされないまま、という事になって納税者が支払った税金に対する正当な利益を還元されなくなります。

日本人は一旦払った税金の使われ方とか、遠まわしな財産侵害と言うものには非常に無頓着な人種だと思いますが、それではいけないと思います。

また話はわき道のさらにわき道にそれますが、偽造テレホンカードや偽造ハイウエイカードを使われる事で、だれが被害をこうむっているかご存知でしょうか?
きっと、コレを読んでいる多くの人は「NTTでしょ」とか「日本道路公団でしょ」と言うんでしょうね。
この答えは間違いで、「コレを読んでいる人たちみんなです」というか「偽造したものを使用したり販売したりして利益を得た人間を除く、全ての日本に住む人間」といえば良いでしょうか。

第一の被害者はNTTや道路公団ですが、NTTや道路公団は偽造されて受けた被害額を、きちんと、関係の無い一般優良利用者に転嫁してくれます。
偽造の損害額を、一般利用者の使用料で回収するのです。
結局NTTや道路公団は偽造されたって痛くも痒くも無いんです。

皆さんもぜひ、NTTからの請求書を見たとき、帰省で高速道路を使ってその料金が高いなぁと思ったときに、その料金の中には偽造テレカや偽造ハイカで使用された人たちの通行料や通話料が含まれていると言うことを思い出しましょう。

さて、恒例のわき道話、アクアリウムに関係無い話から戻りまして・・
本題に入ります。

最近とあるルートから左の画像のような書状をスキャンニングしたデータを入手しました。
pH計や電子水質測定器具や浄水器を始めとするありとあらゆる水槽関連器具で有名なB社の文書です。


そういえば3年ほど前にも、不況のアクア業界でブランドイメージの確立に成功して、唯一勝ち組のアクアメーカーであるA社も左のような書状を出して話題になりました。

(社名は出現順にABC順の仮名としました、メーカー名の頭文字では有りません(笑))

色々と調べてみた結果、A社の場合はメーカーや卸の時点で、販売ボリュームに比例する割引を行っていて、それによりA社製品を大量に販売するショップへの卸価格が安く成り過ぎて、それなりの利益を上乗せして販売しても、一般の小売店への卸価格より下回ってしまうという事象が一部で発生し、一般の小売店よりメーカーへのクレームが発生したというのが、「適正な価格による販売のお願い」書状の理由のひとつでも有るらしいです。

文章を見ても、「お前法律知ってんのか?」と言いたくなるような高圧的内容、小売店保護を口にしながら、大量に自社製品をさばいてくれるお店を優遇する二枚舌、結局は定価販売でブランドイメージを確立したい、という最悪な意図で発行されたA社の価格統制問題は、あまりネタにするのも馬鹿らしいのでコレぐらいにして、今回のB社の場合を色々と考えてみたいと思います。

B社の書状の文章をじっくりと読んでみて、皆さんどうお感じでしょうか?
まA社のと対比すると、ちょっとはかばってあげたいと言う心情も沸いてきますが、実に複雑で「我々としても安ければそれで良いのか?」って事も、考えてみる必要があるのではないかと言う気になります。

以下青字はB社発行の問題の書状から抜粋

これはエンドユーザーへの行き過ぎた価格サービスであり、本来のサービスが行えるだけの利益が確保できていないように思えます。
最近の世の中では『本来のサービス』が多様化してしまったところに問題が有るように思います。
昔のように熱帯魚に関するものは必ず、町のアクアショップに行かなければ手に入らず、そこには昔からの知識や技術があるオヤジが居た時代なら簡単でした。
今では器具だけを店舗を持たず通信販売するような業者に求められるサービスと、町のアクアショップに求められるサービスを、同じ土俵、同じコストで勝負する事自体が無理な気がします。

果たしてこれが観賞魚業界の発展につながることなのか疑問と言わざるを得ません。販売店様が利益を上げる事で、初めてエンドユーザーにさまざまなサービスが提供できるのではないでしょうか。
これも納得できる文章だと思います。
アクアショップが有って初めて、キスゴムのひとつも買えるのです。

そういう意味では、どうしても直接購入したい生体だけはアクアショップで購入するが、それ以外の器具などは、安ければ安いほど良いという観点で、無店舗で安売りしている通信販売を利用すると言う選択で、我々アクアリストの行動としても、それで良いのでしょうか?

但し、ショップにしても、たいした知識も無く、とりあえず利益率の高い、必要の無い水質調整剤の消耗品を売りつけたり、入荷したばかりで調子の落ちている魚を安く売りさばいて儲けを出しているようなショップも有り、一概にアクアショップはアクアリストにとっての守るべき聖地とは言えません。
自分の町に根付いてあこぎな商売をしていないアクアショップなら、アクアリストは必要なものを買うためにお金を使い、アクアショップが健在であるよう協力すべきではないかと思います。

通信販売にしても、昔は珍種や難種の入手は都会にあるマニア御用達のようなショップでしか手に入らなかったものが、地方の人でも購入する事が出来ようになり、日本全国にマニア度を深めるという事に貢献した業者も有りますが、一方では無店舗でユーザーへのサポートというコストが掛からない事を良い事に、ただ単に器具を安売りする事で利益を出し、生体の供給やユーザーへのサポートでコストが掛かっている町のアクアショップを圧迫しているだけの通販業者も有ります。

また悪徳通販業者は1個につき200円とか300円にボリュームディスカウントさせている宅配業者を使いながら、商品には千円とか2千円の送料を加算して、一見安く見える商品の値段を、こっそりそれほど安くない価格に戻したりと言う方法は、日常的に行っていたりします。

これからは『利益を上げる』事をお互いの立場で真剣に考えていく時期だと思います。
これについては、アクアリストとしても、それぞれの判断の元、アクアショップ、通販会社を選択し、必要なアクアショップには協力し、お金を使い、場合によってはこれまでタダとされたユーザーサポートについてもお金を支払うなどの、利益を上げる為の必要な協力を行い、安さだけを追求した器具の通信販売は利用せずといった、アクアリストの立場で真剣に考え行動していく事も必要な時期に来ているのではないかと思います。

皆さんもアクア用品や草や生体の購入の際には少しだけ考えてみてください。

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