汎用と専用(2001/04/22記)

しばらく前の話ですがテレビのニュースでワープロの名器と呼ばれた東芝のルポというワープロ専用機が生産中止になると報じていました。
富士通のOASYSも生産中止に成るとか成らないとか(もしかしたらもう生産していないのかな?)という話も聞きました。

生産中止となった背景にはパソコンの進歩と普及があったそうで、確かにルポやOASYSといったワープロも現在でもワープロソフトとしては存在し続けているようです。

ルポやOASYSといったワープロ専用機の様なものを「専用コンピュータ」と呼び、パソコンのことを「汎用コンピュータ」と呼びます。
技術の進歩がまだそれほどでもなかった頃は、ある特定の機能を実現するには専用に設計された装置で行った方が、断然安くて高機能なものが出来ました。
しかし、現在ではハードウエア技術が格段に進歩したため、ワープロといった程度の処理は汎用の機械にソフトウエアを搭載することで実現が出来、それに変わって1台のハードウエアで色々な機能を兼ね備えることが出来るので、結果的には用途に応じて専用機を複数台用意するよりも、安いコストで実現できるという時代に変わってきました。

これをアクアリウムの世界に置き換えて考えると・・・
エーハイムのホースや機材とフルーバルのホースや機材、お互いに接続可能なものが多いですが、中にはこのフルーバルのパーツにはエーハイムのホースが接続できないといった組み合わせも存在します。

エーハイムのホースと日本の水道配管用の塩ビパイプは互換性がありませんが、このようにすれば接続が可能となります。

専用汎用という意味とは少し違いますが、昔はエーハイムのポンプ類は対応している電源周波数が一つだったので、関東地方で購入したものを関西地方で使用するには、それなりの対応を行った上でなければ使用できませんでしたが、最近のエコフィルター以降のポンプ類は50Hz/60Hz兼用になったため、引っ越しや離れた地方での安い商品を通信販売を利用して購入したとしても気にせずに使用することが出来るようになりました。
これは非常に良いことだと思います。

一方、アクアリウム用品の中でも初期費用・ランニングコストともに多くのお金が必要となる部類の機材に小型ボンベによるCO2添加装置が有りますが、このボンベとレギュレータの規格には、多くのメーカーが共通して使っている規格の商品と、特定の会社が独自に使っている規格の商品があります。

仮にここでは複数のメーカーが使用している規格を汎用規格、アクアリウムのCO2添加装置としての用途では特定のメーカーだけが使用している規格を専用規格と呼ぶことにして話を先に進めます。

当たり前の話でありますが、専用規格のレギュレータを購入したなら、その後そのレギュレータに使用するボンベはレギュレータのメーカーが発売しているボンベしか使用することが出来ません。
一方、汎用規格のレギュレータを購入すればメーカーが保証している・していない、メーカーが推奨している・していない、という違いはありますが、違うメーカーのボンベを接続することは可能です。

例えるなら、ある専用規格のメーカーの自動車を購入したら、その自動車に使用するガソリンは、そのメーカーが発売しているもの以外は使用できないのと同じような状況に成ってしまうということです。

そのメーカーのレギュレータを買った場合は、以後そのレギュレータを使い続ける限り、そのメーカーにランニングコストを払う以外の手だては無く、アンチメーカー的立場でその事実を考えると、ランニングコストという効果の高い儲け口をよその会社に持って行かれることなく、またボンベの値下げ競争というメーカーにとっては不利益な競争をしなくて済むことを狙っているのではないかとまで勘ぐりたくなります。

自動車の世界で前述のたとえのような特定メーカの燃料しか使えないような車種が存在したとすると、いかに車本体が格好良くても、またいかに車本体が安くても、そういったユーザーにとってのデメリットが有るということが事前に知れ渡るため、実際には売れなくなってしまうでしょう、従って理由の如何に問わずメーカー側はそういった選択を出来ないはずです。

しかし、アクアリウムの世界ではユーザーにとっての情報が少なすぎる上に、ユーザーのよりどころであるアクアショップでさえも、小型ボンベのCO2添加にはそれなりのランニングコストか掛かること、及び専用規格のメーカーのレギュレータを購入した場合は、以後一切そのメーカー以外のボンベは使用できないことをきちんとお客さんにアナウンスするという所の方が少ないため、残念ながらそういったことを知らずに購入してしまい後々困ってしまっているという人も多いようです。

現代の社会の状況やレギュレータやボンベといったハードウエアの技術力から考えれば、専用よりも汎用の方が使う側には都合が良いし、掛かるコストも必ず少なくなるはずです、また汎用にして製造メーカー間の競争原理が働けばボンベ自体も安く成ることが期待できます。
よって個人的意見となりますが、アクアリウム用のCO2添加装置も専用規格よりも汎用規格の方が私は好きです。

専用規格のCO2ボンベを使用する国内の某メーカーは、専用規格を使用している理由を「安全性を高めるためにそういった方法を選択している、また自社のボンベだけを使用してもらうことでも安全性が確保できる」との事ですが、いつも製品の技術力の高さを誇っている広告をお出しのメーカーさんなので、それほどの技術が有れば汎用規格を用いながら、それでいて安全性の高い商品だって作ることは簡単だろうと思います。

またその某社さんのCO2装置は発売当初から専用規格を利用していたわけではなく、もともと汎用規格だったにもかかわらず、あるモデルチェンジを境に専用規格に変更されました。
変更された時期はちょうど水草水槽が世の中に知られてきて、その他のアクアメーカーからゾクゾクと安いCO2機器が発売されだした時期である事を考えると、「安全性を高めるため」というメーカーが公表している理由以外に、専用規格を選択する本当の理由が有ったのではないかと思うのは私だけでしょうか?

2003/12/07 追記

最近ではコンピュータの分類も技術の進歩と一般化によりだいぶ様変わりしてきております。
パーソナルコンピュータが一般化し、サーバーと言う言葉が一般人にまで浸透するにつれて、最近では汎用コンピュータと言えばホストマシンやメインフレームと呼ばれる分類を連想される方も多い様ですが、ここでは機械内に(簡単には)書き換え不可なプログラムを持ち、起動すると所定の処理のみ実行可能なコンピュータを専用コンピュータ、記憶するプログラムや実行するプログラムを変更する事で色々な処理が出来るコンピュータを汎用コンピュータという、1980年代またはそれ以前に主流だった分類をあえて使っております。

現在の一般的な分類では多少違和感が有るかもしれませんが、それも此処で言う汎用コンピュータが一般的になりすぎ、ワープロ専用機などの専用コンピュータは電卓や家電などのコンピュータと認識されないほどの、ごく限られた部分にしか残らなくなってしまった為、その様なグルーピングすら必要でなくなったことから、汎用コンピュータ=メインフレームというのが一般的に成ったのではないかと思います。

現在主流の汎用コンピュータ=メインフレームと言う分類も、サーバーマシンやパソコンクラスのコンピュータはごく限られた機能を提供するだけであり、大型の基幹業務はメインフレームで処理するというのが一般的であるために、汎用機と呼ばれているだけと私は思います。
今後はサーバーやWindowマシンでも基幹業務を処理するというふうに変わってくるでしょうから、そうなった頃にはまた汎用というくくりが変って来るかもしれませんね。

きっとコンピュータの世界では近い将来全てが本質的に汎用になり”汎用”という修飾をすること自体が意味が無くなると私は予想します。
アクアリウムの世界もやっと電源周波数で汎用となる波が訪れた程度ですが、コンピュータの発展を見習ってあらゆる物が汎用となり、利用者のチョイスで色々なメーカーの物がもっとシームレスに組み合わせられるように成ることを願います。
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